いよいよ5月30日(金)〜6月1日(日)、静岡県の富士スピードウェイで開催されるENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『NAPAC 富士24時間レース』。日本で唯一の24時間レースであり、獲得することができるポイントも大きいことから、スーパー耐久シリーズにとっても年に一度の大一番でもある。
そんな一戦は、スーパー耐久に参戦する全10クラスで争われる。台数も多様な60台が揃った。各クラスの第2戦鈴鹿(開催がなかったクラスは第1戦もてぎ)を振り返りつつ、第3戦『NAPAC 富士24時間レース』をプレビューしよう。
GT3カーで争われるST-Xクラスは、第2戦鈴鹿には1台が増え6台がエントリーした。4月26日(土)に行われた公式予選では、その今季初登場となった一台、#33 Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3がいきなりポールポジションを奪う。
4月27日(日)に行われた決勝レースでは、#33 Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3がスタートでAドライバーを起用する一方、序盤からプロがドライブする#31 DENSO LEXUS RC F GT3、#777 D’station Vantage GT3、#23 TKRI松永建設AMG GT3、#666 seven x seven PORSCHE GT3Rによる激しい戦いが展開された。
しかしAドライバー同士の第2スティント以降、優勢にレースを進めたのは#666 seven x seven PORSCHE GT3R。序盤、中盤に2回のスピンもあったが、それを覆すスピードとピット作業の早さをみせリードに立つとそのまま優勝。後方からプロが繋ぎ猛追をみせた#33 Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3が2位に食い込み、#777 D’station Vantage GT3が3位という結果となった。
迎える第3戦富士24時間は、#777 D’station Vantage GT3が参戦しないものの、#81 DAISHIN GT-R GT3が今季初登場となる。富士24時間では毎年のように優勝争いを展開しているチームで、今季も優勝候補の一台なのは間違いないだろう。
また一方で、昨年の富士では大接戦のうえ2位に終わった#23 TKRI松永建設AMG GT3、2025年シーズン開幕からの3連勝を狙う#666 seven x seven PORSCHE GT3R、現役DTMドライバーを加えた#33 Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3、豪華ラインアップを揃える#31 DENSO LEXUS RC F GT3、そして耐久で強さをみせるアウディを走らせる#21 Hitotsuyama Audi R8 LMSと、全車に優勝のチャンスがある。今季は最も予想がしづらいエキサイティングな年かもしれない。24時間のドラマは見逃せないだろう。
GT4カーで争われるST-Zクラスは、第2戦鈴鹿には中国から初登場となったPrime Racingを含む12台がエントリーした。レースは序盤から3台のトヨタGR SUPRA GT3 EVOによるトップ争いとなっていったが、これに割って入ったのが#22 EBI GROUP Cayman GT4 RS CSだ。
ただ、結果的に地力の強さをみせた#52 埼玉 GB GR Supra GT4 EVO2が優勝を飾り、#885 シェイドレーシング GR Supra GT4 EVO2が2位に。序盤トップにも立った#22 EBI GROUP Cayman GT4 RS CSは3位に入り、第1戦もてぎでの火災の雪辱を果たしている。
迎える第3戦富士24時間は、9台と第2戦よりも少ないエントリーではあるものの、それでも充実したラインアップだ。近年、このレースで強さをみせているのは#52 埼玉 GB GR Supra GT4 EVO2と#885 シェイドレーシング GR Supra GT4 EVO2という2台だが、2024年は悔しいレースとなった2台のraffinée日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4、そして#20 NANIWA DENSO TEAM IMPUL Z、さらに毎年この富士24時間でコンスタントなスピードをみせる#22 EBI GROUP Cayman GT4 RS CSといったところが優勝争いに絡んできそうだ。
富士24時間レースでは2024年、2023年はエントリーがなかったのがST-TCRクラス。しかし今季は#19 BRP★NUTEC 制動屋 CUPRA TCR、#98 WAIMARAMA Elantra N TCRという外国車2台がエントリーし、いずれも強力なラインアップで熾烈な戦いとなりそうだ。
今シーズンは第2戦鈴鹿はクラスの開催がなく、第1戦もてぎが開幕となったが、5台で争われた一戦は#97 Racer ホンダカーズ桶川 CIVICが貫禄の開幕勝利を飾っている。その一戦で表彰台を獲得したのが今回エントリーしている#19 BRP★NUTEC 制動屋 CUPRA TCR、#98 WAIMARAMA Elantra N TCRという2台だ。
速さをもつ魅力的な2台の争いは目が離せないだろう。
他のクラスに該当しない、STOが認めた開発車両が参加できるST-Qクラスは、第1戦もてぎはGR Team SPiRITの#104 GR Yaris DAT Racing Conceptの1台、第2戦鈴鹿では#12 MAZDA SPIRIT RACING RS Future concept、#55 MAZDA SPIRIT RACING 3 Future concept、さらに#61 SUBARU HighPerformanceX Future Conceptが加わった。第2戦では残念ながら#55 MAZDA SPIRIT RACING 3 Future conceptがレースでは最後にストップしてしまったものの、今季のST-Qクラスはクルマづくり、カーボンニュートラルへの取り組みを続けながらも、全車のスピードが近いところにあり、各車の“バトル”も盛り上がってきていることを感じさせた第2戦だった。
迎える第3戦富士24時間は、いよいよ今シーズン初めてTOYOTA GAZOO ROOKIE Racingが#28 TGRR GR86 Future FR concept、#32 TGRR GR Corolla H2 conceptの2台体制で参戦する。#28 TGRR GR86 Future FR conceptはサスペンションやブレーキ等、また水素エンジンを搭載する#32 TGRR GR Corolla H2 conceptも新たなトライを行っており、この2台についての詳細はレースウイークに明かされるはずだ。
6台が参加するST-Qクラスが24時間レースを通じて目指すものは、市販車へのフィードバック、そしてクルマ社会の未来である。ぜひその戦いにご注目いただきたい。
2025年は#2 シンティアム アップル KTMと#47 D'station Porsche 992の2台による争いが展開されているST-1クラス。第1戦もてぎ、第2戦鈴鹿とも#2 シンティアム アップル KTMが連勝を飾っているが、第2戦鈴鹿についてはその差が少しずつ縮まっていることを感じさせている。
迎える第3戦富士も2台の争いとなるが、#2 シンティアム アップル KTMは小林崇志を、#47 D'station Porsche 992は星野敏と上村優太のふたりを加え戦う。今回も僅差の戦いになることが予想されるが、両者とも恐れているのはトラブルだろう。今季3戦目はどちらに軍配が上がるだろうか?
ST-2クラスは、第2戦鈴鹿がクラスとしてはお休みだったことから、第3戦富士24時間がひさびさのレースとなる。今季第1戦もてぎ同様、8台がエントリーした。
4月の第1戦もてぎでは、#72 OHLINS CIVIC NATS、そして#13 ENDLESS GRヤリスがトップ争いを繰り広げていたが、後方から追い上げ終盤逆転勝利を飾ったのが#225 KTMS GR YARIS。2024年のチャンピオンチームが幸先の良い開幕勝利を飾った。
第3戦富士は、過去2年は#13 ENDLESS GRヤリスが優勝を飾っている。一方、#225 KTMS GR YARISはこの富士24時間に向けてアップデートした車両を公式テストに持ち込んでいるが、夜間走行時にクラッシュもあり、そのダメージが心配されるところだ。
そしてGR YARIS勢に対し、Honda CIVIC TYPE R勢もこの24時間を制するべく準備を整えている。4台がそれぞれこのレースに向けてゲストドライバーを加えており、Hondaのワークスドライバーたちが加わる。彼らの活躍も見逃せないところだ。そしてシンリョウレーシングチームの2台の三菱ランサー・エボリューションXも、豊富な経験を活かし上位に食い込んでくるはずだ。
OKABEJIDOSHA motorsportの2台の日産フェアレディZ、TRACY SPORTS with DELTAの2台のレクサスRC350による戦いが展開されているST-3クラスは、第2戦鈴鹿では#38 TRACYSPORTS with DELTA RC350 TWS、#39 エアバスター WINMAX RC350 TWSともに公式予選ではタイム抹消となってしまう。
しかしレースでは、#16 岡部自動車フェアレディZ34がトラブルに見舞われる一方、#39 エアバスター WINMAX RC350 TWSが序盤から追い上げ。さらに#38 TRACYSPORTS with DELTA RC350 TWSも続いていく。ただ結果的には、2台の追い上げを退けた#15 岡部自動車フェアレディZ34が優勝を飾った。
4台のバトルは第3戦富士でも続いていくはずで、このクラスの攻防は序盤から目が離せない展開になりそうだ。このクラスでも怖いのはトラブルだが、それさえなければ24時間でさまざまなドラマが生まれそうだ。
今シーズンも白熱のバトルが展開されているST-4クラスは、第2戦鈴鹿には9台が参戦した。第1戦もてぎでは土曜のレース1、日曜のレース2ともトヨタGR86勢がトップ3を占める結果となったが、第2戦鈴鹿では、公式予選から#66 odula TONE MOTUL ROADSTER RFが速さをみせた。
決勝レースでも、#66 odula TONE MOTUL ROADSTER RFは#41 エナジーハイドロゲン EXEDY GR86 Winmaxの追撃を振り切り今シーズン初優勝を飾った。2位は#41 エナジーハイドロゲン EXEDY GR86 Winmax、3位は#3 ENDLESS GR86となった。
第3戦富士でも、第2戦同様9台がエントリーしているST-4クラス。トヨタGR86勢、そして#66 odula TONE MOTUL ROADSTER RFを中心に優勝争いが展開されそうだが、24時間レース初挑戦となる#37 DXLパワーミネラルEVO☆NOPRO☆NCロードスター、#290 AutoLabo Racingの2台が初の24時間レースでどんな戦いをみせるかも注目だろう。
特に#290 AutoLabo Racingは、富士24時間では初めてのスズキ車の参戦になるはず。公式テストから夜間走行の準備もしっかり整えており、多くのスイフトファン、スズキファンの期待を背負っての戦いとなりそうだ。
2025年から前輪駆動車のクラスとして定められたST-5Fクラスは、第2戦は7台がエントリーした。レースは序盤からポールポジションを獲得した#4 THE BRIDE FITと#67 YAMATO FITが激しく争う展開となったが、#4 THE BRIDE FITが無念のストップ。#67 YAMATO FITが開幕2連勝を飾った。2位は#110 ACCESS BARDEN VITZ、3位は#17 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2となった。
第3戦富士24時間は、ST-5Fクラスができてから初めての24時間レースとなるが、クラスが分かれていないST-5クラスとしてここ2年連覇を飾っているのが#17 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2。3連覇を飾りランキングでも優位に進めるのか、それともHonda FIT勢が連勝を止めるのか注目だ。
2025年から後輪駆動車のクラスとして定められたST-5Rクラスは、第2戦鈴鹿には8台がエントリー。レースは序盤からポールポジションの#88 村上モータースMAZDAロードスターがリード、#610 KOSHIDO RACING ロードスターが追う展開だったが、#610 KOSHIDO RACING ロードスターはクラッシュを喫してしまうことに。
さらにトップを走っていた#88 村上モータースMAZDAロードスター、これに続いた#65 odula TONE 制動屋ROADSTERもともにアクシデントに巻き込まれる展開となってしまうが、そんな荒れた一戦を制した#27 Maple Hiroshima MAZDA ROADSTERが嬉しい初優勝を飾った。2位は#76 PROGRESS 高砂 ロードスター、3位は#65 odula TONE 制動屋ROADSTERとなった。
第3戦富士は、ST-5Fクラスと分かれての初めての24時間レースとなるが、近年毎年ST-5クラスの表彰台を獲得してきたのは#65 odula TONE 制動屋ROADSTER。しかし7台が参戦する第3戦で、もちろんライバルたちも優勝を目指してくるはずだ。大一番を制し、シリーズの流れを掴むのはどのチームになるだろうか。