2021公式テストレポート@富士スピードウェイ

スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook公式テストレポート

初お目見えのマクラーレン720Sが、挨拶代わりの好タイムを記す

今年からスーパー耐久シリーズは、ハンコックからタイヤが供給されることになり、正式なシリーズ名称は「スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook」に改められた。その最初の公式テストが2月27日に富士スピードウェイで開催され、38台の参加を集めた。それぞれ新たなタイヤの感触を確かめつつの走行となったが、デイセッションにおいて最速タイムを記したのは#290 Floral Racing with ABSSAのマクラーレン720S GT3。コースレコードには及ばなかったものの、昨年の「富士SUPER TEC 24時間」の予選から実に1秒ものタイムアップを果たしていた。

 

優れた耐摩耗性とハイグリップを両立

コントロールタイヤがハンコックに改められたことで、まず誰もが気になるのが、その特性だろう。そこでSTO(スーパー耐久機構)の松崎穣テクニカルアドバイザーに話を聞いた。

「昨年まで使用していたタイヤは、メーカーさんから渡されたものを使っていたのですが、今回は新しいメーカーさんとの仕事でしたので、こちらから『こういうスペックで』と要求しました。その内容としてはまずは耐摩耗性。グリップではなく、摩耗を重視してほしいと。その理由はチームへの費用負担を減らすためで、2スティント走行できる可能性のあるタイヤにと。2スティント確実ではなく、チームが上手に走れば2スティント走行が見え隠れするぐらいでいいのでと、そういう話をさせていただきました」

「僕の印象では、かなりいいものができていると思います。特にジェントルマンドライバーからのコメントがすごく印象的で、『旋回中のアンダーステア、オーバーステアの変化が安定している』、『予測不能な状況で、いきなりグリップが抜けてしまうことがない』、『アンダーが出ても解消するまで待っているんじゃなく、そこでまだ応答性が残っている』んだそうです。そこがすごく分かりやすくて、乗りやすいと、ほぼすべてのジェントルマンドライバーからいただいています」


「しかも、そこまで要求していないんですが、グリップレベルがちょっと昨年まで使用していたタイヤよりも高いようで、ちゃんとそこを活かせば、ピークのタイムは向上するのではないかと言われています。単純にゴムだけではなくて、ケースとの兼ね合いがすごくいいらしく、お互いのパフォーマンスが高くなっているようです」
「でも、最初からこうだったわけではなく、これまで3回ぐらい仕様変更をしています。昨年、最初にテストした時はもっとグリップ寄りで、本当に不要なぐらい。なので『このタイヤはいらない』って話はさせてもらいました。とはいえ本当のことを言えば、まだグリップは下げたほうがいいと思ってはいますが、メーカーさんの熱意を思えば、難しいところですね」

確かにグリップが高ければ、プロドライバーには腕の見せどころとなるが、ジェントルマンドライバーに同じような旋回速度での走行、コーナーへの飛び込みが可能かと言えば、かなり厳しいのでは。その結果として、著しいタイム差が生じることが、ジレンマとならないことを望みたいところではある。

セッション1から好タイム連発!

松崎テクニカルディレクターのコメントどおり、新たなコントロールタイヤのグリップ向上は明らかで、すべてのクラスで好タイムが記録された。もちろん9月と2月という、季節的なコンディションの違いを考慮したとしてもだ。

10時10分から行われたセッション1でトップタイムをマークしたのは、#290 Floral Racing with ABSSAのマクラーレン720S GT3。1分39秒742は、昨年の「富士SUPER TEC 24時間」で記録された予選トップタイムを約1秒も上回った。このタイムは続く2セッションでも上回る者が現れず、最後までトップがキープされた。


「乗りやすいです。前にGT-Rを乗らせてもらったんですが、はるかに。シビックより疲れないですよね、シビックの方が『やっている』感がすごくって、マクラーレンは今日、さんざん乗らせてもらったんですけど、疲れていない。私がいちばん乗っているんですけど、疲れない。コーナリングスピードも速いし、体にも負担がかかっているはずなんですけど。うちのいちばんの武器はドライバーが揃っていることなので、BoP的に厳しいでしょうが、腕でカバーしていくことになりそうです」と植松忠雄。

そして、ベストタイムをマークした澤圭太は「クルマがマレーシアから戻ってすぐだったので、ちゃんと走るかどうか、からだったのでギリギリで、本当に薄氷を踏む感じでした。走り出したら、ハンコックタイヤも初めてながら、昨日と合わせた2日間で特性もつかんで、タイムレベルも他は三味線、弾いていると思うんですが、うちは素の状態を知るところから始めなくてはいけないので、ペースコントロールするでもなかったので、トップタイムは出るべくして出たと思うんですが、本戦になると相対的にはきつくなると予想しているんですが、クルマがノントラブルで走り続けられているので、すごく順調でした。他の3人との連携もうまく取れているので、いいところを見せられると思います」と語っていた。

また、ハンコックのタイヤの印象に関しては、「グリップレベルも上がっているようで、なかなか好印象です。予選と決勝とで、今まで以上に走らせ方、セットの作り方はうまく振らないといけないように思いますが、うまく合わせればタイムも安定しているでしょうし、ライフも問題なさそうです」と澤。

新設されたST-Qクラスに、あのクルマが!

3台のST-Xクラス勢に続くタイムを記したのは、#28 ROOKIE RacingのトヨタGRスープラ。新設されたST-Qクラスからのエントリーとなる。このクラスは「STOが参加を認めたメーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両」とされ、同車は後者に相当する。

「昨年はST-1クラスで出ていましたが、昨年のクルマをモータースポーツ基調で、もっといいクルマに、より強くしていくためには、どうしても従来の規格から出てしまうんですが、STOさんがそういうクラスを新しく設けていただきましたので、ST-Qというクラスで、いろんなトライができるようになりました。だから、どこのクラスにも該当しない車両ということになります、ROOKIE Racingはプライベートチームなので。より強い車両にしようということで、トヨタ自動車から開発の委託を受けています。主な変更点としては、外観ではカーボン製のエンジンフードでしたり、午前中にはカナードをつけたり外したり。どういう形で本戦に出るかは、今日のテスト次第で、レースごとに変えていく可能性もあります。ST-Zクラスですと、そういうことができなくなるというのもありますね」とROOKIE Racingの加賀悠太氏。

なお、ROOKIE Racingのドライバーラインアップだが、#28 GRスープラは蒲生尚弥/豊田大輔/小倉康宏/山下健太組で、ST-2クラスでトップタイムをマークした、#32 GRヤリスは井口卓人/佐々木雅弘/TBN/松井孝允組となる。

まるでCカー!? KTMのニューマシン

そして総合5番手につけていたのが、ST-1クラスでエントリーしている#2 DTMカーズJAPANのKTM GT-X。まるでレーシングカーのようなルックスの車両だが、これがこのままナンバーつき車両が存在するという。ベースとなるモノコックは市販車のX-BOWと共通で、リヤのみサブフレームが追加されている。エンジンはGT4と同じアウディ製ながら、2480ccの直列5気筒ターボを搭載。同クラスにエントリーする、#38 TRACY SPORTSのGRスープラをコンマ7秒上回る、1分46秒825を叩き出している。

「Cカーみたいな攻撃的なルックスで、でも乗ってみると意外に乗用車っぽいクルマです。去年のGT4の方がレーシングライクな動きをしていて、こっちの方がマイルドな味つけになっていて、ジェントルマンの皆さんも乗りやすいって言っています。耐久レース向きですね、どっちかと言うと。GT4の方がホイールベースも短くて、一発のタイムは出せました。まだつかみ切れていないところもあるんで、それを今回のテストで洗い出したいと思っています。直線は決して速くなくて、でも日本のガソリンで走るのは初めてだと思うので、そこのマップに合っていないのかも」と加藤寛規。まだまだ伸びしろはありそうだ。

ST-5クラスは、一気にタイムアップ

非公式ながらも、レコード更新なったのは2クラス。そのうちのひとつが最多11台の出走となったST-Zクラス。トヨタGRスープラが3台登場し、注目されたものの、クラス最速、総合6番手につけたのは、#47D’station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージGT4。こちらは1分46秒946はコンマ3秒ほどの短縮であったが、一気に2秒もの短縮を果たしたのが、ST-5クラスだった。2分2秒254を記録したのは、#456 OVER DRIVEのマツダ・ロードスター。


「クルマのセットは昨年のまま、何も変更せず新しいタイヤに履き替えてトライしてみたら、あのタイムが! 感触としては、もちろん従来のタイヤよりグリップが良かったです。ピークグリップもあるので、2分2秒台を連続で何回も行けるかというと、だんだん落ちていく傾向にあったんで、そのあたりが予選ではキモになりそうな感じです」と橋本陸。よりタイヤに合わせたセットとなっていけば、まだまだタイムは縮まりそうだ。

なお、ST-3クラストップは#41 TRACY SPORTSのレクサスRC350が、そしてST-4クラスのトップは#310 C.S.I Racingのトヨタ86が、それぞれ昨年のチャンピオンチームとして貫禄を見せていた。もちろん、いずれも昨年の予選タイムを上回った。

デイセッションの最後に、2クラスでタイムアップ!

13時からのセッション2、15時からのセッション3は、ほとんどのチームが一発の速さより、ロングラン重視の走行となったようで、トップタイムの更新となったのは、ST-3クラスのみ。2019年に記録したレコードタイムを、2セッション連続で自ら更新したのがトヨタ・クラウンRSの埼玉トヨペットGreen Brave。1分50秒588を記して決まりと思われたものの、セッション3半ばでトップタイムをさらに縮めてきたのが、#244 Max Racingのニッサン・フェアレディZだった。1分50秒361をマークし、Zの復権に期待が注がれることとなった。

また、ST-Zクラスでもセッション3の終盤に、#47D’station Racingのヴァンテージがタイムアップに成功。1分46秒686が記されている。

ナイトセッションでaprのレクサスRC Fが総合トップタイムを記す

15時50分から2時間にわたって、ナイトセッションが実施され、多くのドライバーが夜間走行の習熟に充てる中、唯一ST-Xクラスではトップタイムが更新された。#31 aprのレクサスRC Fをドライブする、小高一斗が1分39秒377をマークした。


その小高のチームメイトで、F3時代にハンコックのタイヤを経験している嵯峨宏紀は「僕はハンコックのタイヤに対して、非常にポジティブな印象を持っていて、パフォーマンスの高さは経験済みなんです。S耐のタイヤも非常にグリップが高いし、荷重かけて、また抜きながらコーナリングパフォーマンスを高めていくというのが、非常にやりやすい。剛性も高いので、ライフも長いんじゃないでしょうか。スイートスポットの幅も広いので、特にジェントルマンには扱いやすいでしょうね」と好評価を下していた。


今年の年間エントリーは、現時点で61台。今回、参加しなかったチームの中にも有力どころは多数存在するため、例年以上の激戦は必至。もてぎの開幕戦が、今から楽しみだ!

(はた☆なおゆき)

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