7月8日(土)〜9日(日)に宮城県のスポーツランドSUGOで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE第3戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』から3週間のインターバルを経て、シリーズは大分県日田市のオートポリスで第4戦『スーパー耐久レース in オートポリス』を7月29日(土)〜30日(日)に迎える。
今回の『スーパー耐久レース in オートポリス』は、3月の第1戦鈴鹿以来となる5時間レース。見どころも多く、九州のファンにとっても楽しみなレースとなりそうだ。そんな一戦を前に、各クラスの第3戦SUGOを振り返りつつ、第4戦のレースを展望してみよう。
FIA-GT3規定車両で争われるST-Xクラスは、第3戦SUGOには6台がエントリーした。ただ、レースウイークになって急遽#819 DAISHIN MPRacing GT-R GT3が参加を取り止めており、レースは5台で争われていた。時折雨が舞う不安定な天候となった予選では、このコースを得意とする#31 DENSO LEXUS RC F GT3がポールポジションを獲得。2番手に#14 中升 ROOKIE AMG GT3がつけた。
レース直前まで晴天に恵まれていた第3戦のグループ1決勝では、フォーメーションラップ中に雨が舞いはじめてしまうが、そんな不安定なコンディションのなか、予選4番手からアグレッシブにポジションを上げた#23 TKRI松永建設AMG GT3がレースをリードした。
#14 中升 ROOKIE AMG GT3や#1 HELM MOTORSPORTS GTR GT3に対して序盤から大きなリードを広げていた#23 TKRI松永建設AMG GT3だったが、ST-Z車両のストップのため、レースは終盤セーフティカーランとなる。これでリードが失われてしまったが、その後再開後の走り、そして2番手につけていた#1 HELM MOTORSPORTS GTR GT3のピット作業違反のペナルティもあり、#23 TKRI松永建設AMG GT3がST-Xクラスでの初優勝を飾った。
迎える第4戦オートポリスは、GTNET MotorSportsが走らせる#81 DAISHIN GT-R GT3が復帰し、ふたたび6台での戦いとなる。ただし#81 DAISHIN GT-R GT3はカーナンバー、車名、Aドライバーが変更されている。このコースは日産GT-R NISMO GT3が比較的得意としているコースだが、オートポリスはなんと言ってもタイヤへの負担が大きい。ブリヂストンのスリックタイヤをいかにうまく履きこなすか、また登り区間となるセクター3でいかにタイムを落とさず走るかが重要になりそうだ。
また今季も第4戦ということもあり、そろそろウエイトハンデも大きくのしかかってくる。その点では、ランキング5位でまだ比較的軽い#81 DAISHIN GT-R GT3は有力な存在になるかもしれない。
GT4車両を使って争われるST-Zクラスは、第3戦SUGOには9台が参加した。予選では、#26 raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4が日産Z GT4に嬉しい初ポールポジションをもたらし、#885 シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVO、#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4が続いた。
レースでは#885 シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOが悔しいトラブルに見舞われてしまう一方で、展開、スピードとも強さをみせつけたのが#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4。破竹の開幕3連勝を飾り、タイトル争いを大きくリードすることになった。一方、序盤トップを走った#22 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSを終盤かわし、#26 raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4が2位でフィニッシュ。さらに同様に終盤追い上げた#20 ナニワ電装TEAM IMPUL Zが3位で初表彰台を獲得した。
第4戦オートポリスには、#22 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSが参加しない一方で、#75 Team Noah GR Supra GT4が第2戦以来の復帰。第3戦同様に9台で争われることになる。ST-X同様、ブリヂストンのスリックタイヤへの合わせ込みが重要となりそうだが、いずれにしろライバルたちは#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4の連勝を止めるのが至上命題と言える。
なおこのオートポリスは、不思議と2021年、2022年ともにGR Supra GT4が勝てていないコースでもある。果たして連勝は止まるのか、それとも……!?
2022年にこのクラスを戦っていたTeam NoahがST-Zクラスに移り、M&K Racingが参戦していなかったことで今シーズンの開幕3戦はST-TCRクラスにエントリーがなかったが、いよいよ第4戦から#5 AI' CIVIC、#97 Racer HFDP CIVICという2台のHonda CIVIC TYPE R TCRがエントリーすることで、ST-TCRクラスが戻ってくることになった。
ファンにとって楽しみなところとしては、#5 AI' CIVICはFK8型、そして#97 Racer HFDP CIVICは日本初登場となるFL5型のCIVIC TYPE R TCRとなるところ。いったいどんな戦いをみせてくれるのか楽しみにしたい。
スーパー耐久機構が認めた開発車両が参加することができるST-Qクラスは、第3戦SUGOには4台が参戦した。このうち、#28 ORC ROOKIE GR86 CNF conceptと#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptがグループ2のトップ争いを演じた。ST-4車両を上回るパフォーマンスを見せつけた2台は、序盤からバトルを展開したが、レース中盤以降、#28 ORC ROOKIE GR86 CNF conceptはわずかにエンジンパワーを失うトラブルが発生。ピットイン時に応急処置を行ったが、ここでの差が大きく、#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptがグループ2のトップチェッカーを受けた。
一方、グループ1には#32 ORC ROOKIE GR Yarisと#271 CIVIC TYPE R CNF-Rが出走。#32 ORC ROOKIE GR Yarisは序盤から長いスティントを走るなどタイヤに対してのトライを行うなどST-Qならではの開発を行いながら、きっちりと走り切った。また#271 CIVIC TYPE R CNF-Rもトラブルはあったが、こちらも最後まで走り切りチェッカーを受けている。
迎える第4戦オートポリスでは、#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptはお休みとなるものの、楽しみなエントリーが並んだ。MAZDA SPIRIT RACINGは#55 MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptが第2戦以来の復帰となるほか、新たに#12 MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptを投入する。
この車両は、2リッター直列4気筒自然吸気エンジンを搭載。#28 ORC ROOKIE GR86 CNF concept、#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptと同じカーボンニュートラル燃料を使って参戦する。2台は第3戦SUGOから燃料の蒸留特性や希釈に対する性能など、さまざまな性能を向上させた新燃料を使っており、#28 ORC ROOKIE GR86 CNF conceptのターボエンジン、#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptの水平対向エンジンに加え、直列4気筒自然吸気エンジンでの性能を検証していくことになる。メーカーの垣根を越えた協力で、まさに“共挑"というST-Qクラスのコンセプトを示す活動になりそうだ。
さらに、第2戦富士で世界初の挑戦を成し遂げた液体水素使用の#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが復帰する。第3戦は参戦しなかったが、その間に40kg以上もの軽量化やポンプの改良などを成し遂げているとのことで、さらにピットストップ時間も向上することになりそう。またファンを驚かせる挑戦を目の当たりにすることになりそうだ。
そして参戦3戦目となる#271 CIVIC TYPE R CNF-Rがどんなパフォーマンスを示すか。今回からST-TCRクラスに#97 Racer HFDP CIVICが参戦することで、ST-2、そしてST-Qと3クラスに3種類のFL5型Honda CIVIC TYPE Rが参戦する。ファンの皆さんもぜひ比較して楽しんで欲しい。
5台が参加した第3戦SUGOでのST-2クラスは、2022年チャンピオンである#225 KTMS GR YARISが専有走行からスピードを見せつけた。予選でもチーム初となるポールポジションを獲得すると、Aドライバーハンデのピットストップを跳ね返す快走をみせ、今季初優勝を射程圏内に入れていたが、中盤ハブベアリングが破損するというまさかのトラブルに見舞われてしまった。
トップ争いはこれで三つ巴の展開となったが、混戦を勝ち抜いたのは#6 新菱オートDIXCEL夢住まい館エボ10。三菱ランサー・エボリューション10にひさびさの優勝をもたらし、チームは喜びに沸くことになった。
第4戦オートポリスでも、第3戦同様5台がエントリーしている。長い5時間レースということもあり、#225 KTMS GR YARIS、さらに第3戦で2位となった#13 ENDLESS GR YARISにとっては、Aドライバーハンデを跳ね返す時間は第3戦よりも多くある。
ただ一方で、#13 ENDLESS GR YARISが優勝すると、シリーズ争いを優位に持ち込むことになってしまう。第1戦の勝者であるランキング2位の#743 Honda R&D Challenge FL5にとってはこのあたりでふたたびポイント差を縮めたいところでもあるだろう。
第3戦で開催がなかったST-3クラスは、第4戦オートポリスが2ヶ月以上ぶりのレースとなる。第2戦富士SUPER TEC 24時間レースでは、TRACYSPORTS with DELTAの2台のレクサスRC350の優勝争いとなっていたが、#38 ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWSがレース途中のペナルティストップ60秒という遅れを跳ね返し、#39 エアバスター WINMAX RC350 TWSに4周の差をつけ優勝を飾った。
迎える第4戦も、2台のレクサスRC350、そして3台の日産フェアレディZとの戦いとなる。2022年に優勝を飾ったのはトヨタ・クラウンだったが、今季は参戦がない。2位に入っていたのが#39 エアバスター WINMAX RC350 TWSで、2021年は優勝も飾るなど相性が良い。
とはいえ、ここでTRACYSPORTS with DELTAの逃げ切りを許してしまっては、フェアレディZ勢もランキングで苦しくなってしまう。特に今季トラブルが多い#25 raffinée 日産メカニックチャレンジ Zにとっては負けられないレースにもなりそうだ。
第3戦SUGOでは13台がエントリーし、序盤から激しいトップ争いが展開されたのがST-5クラス。ホンダ・フィットやマツダ・ロードスター、マツダ2が入り乱れての戦いは第3戦のグループ2の決勝レースを大いに盛り上げることになった。
予選でポールポジションを獲得したのは#72 OHLINS Roadster NATS。2番手には#67 YAMATO FIT、3番手には#4 THE BRIDE FITが続く展開となったが、決勝レースでも#72 OHLINS Roadster NATSは強さを発揮。今季初勝利を飾った。
一方、2位に食い込んだ#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオがランキングでも首位に立っている。ST-5クラスは2022年はオートポリスでの開催がなかったが、今季はどの車種、チームが覇権を握るか、楽しみなところだ。