2023年のENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONEは、11月11日(土)〜12日(日)に行われた第7戦『S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス』で長いシーズンの幕を閉じた。各クラスで緊迫したトップ争い、そしてタイトル争いが展開されたが、最終戦の各クラスを振り返ってみよう。
3月に開幕した今シーズンのENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONEだが、今季は第1戦直後から波乱の一年となっていた。
これまで、コントロールタイヤサプライヤーとしてシリーズを支えてきたハンコックの韓国内での工場火災の影響で、シリーズへのタイヤ供給継続が困難になってしまった。一時はスーパー耐久シリーズの継続も危ぶまれる状況となってしまった。
そんななか、2024年からのコントロールタイヤサプライヤーに決定したブリヂストンが、シリーズ存続のために緊急対応を行ってくれたことで、第2戦富士SUPER TEC 24時間レース以降もシリーズは無事開催されてきた。今回の第7戦は、そんなシーズンの総決算となるにふさわしい、白熱したレースとなった。
FIA-GT3規定車両で争われるST-Xクラスは、第7戦で#777 D'station Vantage GT3が参戦し7台で争われた。11月11日(土)の公式予選は、時折雨が降り出す非常に不安定なコンディションだったが、Aドライバー予選では走行開始後雨が降り出した。
そんな状況のなか、スリックタイヤのままアタックを敢行した#14 中升 ROOKIE AMG GT3がAドライバー予選で2番手につけ、合算でポールポジションを獲得。一方Aドライバー予選でウエットタイヤに換装しアタックしたランキング2位の#23 TKRI 松永建設 AMG GT3がフロントロウの2番手に並んだ。
迎えた11月12日(日)の決勝レースはドライコンディションとなったが、上位陣はすべてプロドライバーでスタートを切ったことから、序盤から非常に激しいバトルが展開された。そんななか、トップを奪ったのは#31 DENSO LEXUS RC F GT3。一方2番手に続いたのは#1 HELM MOTORSPORTS GTR GT3で、中盤までプロ同士で繋いだことでリードを奪ったが、終盤#31 DENSO LEXUS RC F GT3が逆転。今季2勝目を飾ってシーズンを終えた。
2位は#1 HELM MOTORSPORTS GTR GT3。ペースではトップ2に及ばなかったものの、ステディにレースをまとめた#14 中升 ROOKIE AMG GT3が3位でフィニッシュ。2023年のチャンピオンを決めた。#23 TKRI 松永建設 AMG GT3は、序盤にドライブスルーペナルティを受けたこともあり今季初めて表彰台を逃す結果となった。
最終的なランキングは#14 中升 ROOKIE AMG GT3が参戦初年度でチャンピオンに。2位は#31 DENSO LEXUS RC F GT3、3位は#1 HELM MOTORSPORTS GTR GT3となった。
GT4車両を使って争われるST-Zクラスは、第6戦岡山の時点でチャンピオンが#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4に決定しているなかで迎えた。不安定な状況でのアタックとなった予選では、今季速さをみせながらも決勝ではトラブルが相次ぎ結果が残せていなかった#22 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSがポールポジションを獲得した。
レースでは1周目に#20 ナニワ電装TEAM IMPUL Zと#26 raffinee 日産メカニックチャレンジZが接触する波乱の幕開け。中盤には#26 raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4がピットでトラブルに見舞われるなどのシーンもあった。
そんななか、序盤から#22 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSがリードを広げていくものの、Aドライバーハンディキャップの10秒を消化している間にトップに立ったのは、序盤から激しい競り合いをみせていた#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4、そして#885 シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOという2台のGR Supraだった。
2台は終盤まで接戦を展開したが、#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4がチャンピオンを獲得した今季の強さそのままにレースを締めくくり優勝。2位は#885 シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOとなった。そして#22 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS CSが3位に食い込み、今季初表彰台を獲得した。
ST-Zクラスでは、先述のように#52 埼玉トヨペット GB GR Supra GT4がチャンピオンを獲得。#885 シェイドレーシング GR SUPRA GT4 EVOがランキング2位、コンスタントにポイントを重ね、第6戦岡山で優勝も飾った#34 SUN'S TECHNO AudiR8LMS GT4がランキング3位となっている。
第4戦から2台のHonda CIVIC Type-R TCRがエントリーしているST-TCRクラスは、第7戦富士にも#5 AI' CIVIC、#97 Racer HFDP CIVICの2台が参戦した。
今回もポールポジションは#97 Racer HFDP CIVICがポールポジションを獲得し、レースでもリードを奪っていったが、95周完了時にトラブルのためストップ。さらに接触もあった#5 AI' CIVICは、101周でストップを喫してしまうことに。最終戦は完走なしという結果に終わっている。
ST-TCRクラスは4戦の開催でチャンピオンはないが、#97 Racer HFDP CIVICが88.00ポイントを重ね、37.50ポイントの#5 AI' CIVICをリードしシーズンを終えた。
STOが認めた開発車両が参加できるST-Qクラスは、最終戦も興味深いチャレンジが展開された。まず、第2戦以降さまざまなチャレンジを続けてきた#271 CIVIC TYPE R CNF-Rは、新設計のフロントバンパー、新デザインのリアウイング/テールゲートスポイラーを採用してきた。どちらも外観上からも大きなインパクトを残しているが、この最終戦では走りの面でもきっちりとレースを戦い抜き、120周を走破しレースを終えている。
また、第4戦オートポリス以来の参戦となった液体水素を使用する#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、このレースに向けて大きな課題のひとつだった液体水素ポンプの昇圧性能と耐久性の向上を行い、ガソリン車並みの出力を実現。さらに給水素時の満タン判定の精度向上、軽量化などを行い、スピードではレース序盤にST-4車両をかわす走りを披露した。
さらにピットレーンでの給水素、そしてレース前に目標としていた1スティント20周という目標を達成。途中スピンやペナルティもあったが、それでもST-5車両に迫る103周を走破。いよいよガソリンエンジン車と戦えるポテンシャルを示した。そして今回から、エアクリーナーを通った空気に対し、エンジンの熱を使ってCO2を取りだし回収する機構を装着。レースを戦いながらCO2を減らしていく興味深い取り組みも始めている。
そしてカーボンニュートラルフューエル(CNF)/バイオディーゼル燃料を使う車両たちの争いも激しい戦いとなった。結果としては、リヤの安定性を増し、ドライバーたちからも高い評価を得た#28 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptがスピードの面でも強烈なものをみせ120周を走破した。
119周を走り切ったのは、今季ギヤボックスの強化を経て、最終戦で300馬力を発生させた#55 MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept。高燃費とパワーで、1年間の成長をみせつけた。#61 Team SDA Engineering BRZ CNF Concept、#12 MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF conceptとも、それぞれの成長をみせ無事にレースを完走している。
第7戦を前に、ランキング首位だった#2 シンティアム アップル KTMは完走すればチャンピオンを得られる有利な状態となっていたST-1クラス。一方、ランキング2位だった#47 D'station Vantage GT8Rは、この一戦に向けてシリーズを盛り上げようと、ドライバーラインアップを変更してきた。
#47 D'station Vantage GT8Rは、かつてST-1クラスでチャンピオンを獲得した織戸学/谷口信輝のコンビを復活させたが、最終的にAドライバーがレースまでに見つからず、レースでは90秒ストップのAドライバーハンディキャップを受けることになった。
レースでは序盤#47 D'station Vantage GT8Rがリードを築くが、一度目のドライバー交代を前に#47 D'station Vantage GT8Rが90秒ストップを消化。#2 シンティアム アップル KTMがトップに浮上する。レース終盤に向けて2台の差は少しずつ縮まっていくことになるが、ここで#2 シンティアム アップル KTMにはまさかのターボトラブルが発生してしまった。
#2 シンティアム アップル KTMはガレージに戻ったが、このままチェッカーを受けられないと#47 D'station Vantage GT8Rが逆転タイトルとなる状況となった。ただ、#2 シンティアム アップル KTMは完走に必要な距離を走っていたこともあり、最後はチェッカーを受け2位に。2023年のチャンピオンは#2 シンティアム アップル KTMとなった。一方で、レースは#47 D'station Vantage GT8Rが優勝。人気コンビが盛り上げ以上の成果を勝ち取ることになった。
第7戦を前に、#13 ENDLESS GR YARISが130.50ポイントでリード、#743 Honda R&D Challenge FL5が102.00ポイントの2位で迎えたST-2クラス。予選では今季ここまでトラブルが多発していた#225 KTMS GR YARISがポールポジションを獲得し、#13 ENDLESS GR YARISが2番手につける展開となっていた。
ただこの2台にはAドライバーハンディキャップがあり、それぞれレース序盤に消化。#743 Honda R&D Challenge FL5がリード、2台のGR YARISが追う展開となった。ただ、#13 ENDLESS GR YARISは追い上げの最中にエンジントラブルを抱えてしまう。なんとか一度ピットに戻り、再コースインするも、症状は改善せず、レース中のエンジン交換にトライすることになった。
これで#743 Honda R&D Challenge FL5にチャンピオンの可能性が急浮上するが、タイトルには勝利が必要。一方、#225 KTMS GR YARISはピットインでロスを削り、持ち前のペースで追い上げをみせるとトップに返り咲いた。これで#743 Honda R&D Challenge FL5にとってはふたたびタイトルが遠のく展開となる。
しかし、#225 KTMS GR YARISは101周目、突如エンジントラブルに見舞われ緊急ピットイン。修復し再コースインしたものの、#743 Honda R&D Challenge FL5が再度首位に。そのままトップチェッカーを受けるとともに、逆転でST-2クラスのチャンピオンを獲得した。2位は#6 新菱オートDIXCEL夢住まい館エボ10、3位には#7 新菱オートDIXCELエボ10が入った。
シリーズランキングでは2位に#13 ENDLESS GR YARIS、3位には第3戦SUGOで優勝も飾った#6 新菱オートDIXCEL夢住まい館エボ10が入った。
シーズンを通じて接戦が展開されてきたST-3クラスは、第6戦までに121.50ポイントを重ねた#38 ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWSが111.50ポイントの#15 岡部自動車フェアレディZ34をはじめ、3台をリードして第7戦を迎えた。
11月11日(土)の公式予選では#39 エアバスター WINMAX RC350 TWSがポールポジションを獲得し、#38 ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWSが2番手につける。ただ、11月12日(日)のレース中盤は#15 岡部自動車フェアレディZ34が首位を奪うなど、今回も激しいレースが展開された。
ただ中盤には#39 エアバスター WINMAX RC350 TWSが首位を奪還すると、そのままトップでチェッカー。今季初優勝を飾った。2位は#15 岡部自動車フェアレディZ34、そして3位でフィニッシュした#38 ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWSが139.50ポイントを獲得し、2023年のチャンピオンを獲得した。ランキング2位は#39 エアバスター WINMAX RC350 TWS、3位は#15 岡部自動車フェアレディZ34という結果となった。
激戦が展開されてきた2023年のST-4クラスは、#41 エアバスター WINMAX GR86 EXEDYが第6戦岡山で109.50ポイントまで伸ばし、95.00ポイントの#60 全薬工業 G/MOTION'GR86を逆転。最終戦に向けてタイトルをかけて臨むことになった。
迎えた11月11日(土)の公式予選では、#3 ENDLESS GR86がポールポジションを獲得。#884 シェイドレーシング GR86が2番手につける。ただ、#3 ENDLESS GR86は11月12日(日)の決勝レースを前にグリッドに着けず、#884 シェイドレーシング GR86が序盤のレースをリードしていった。
その後#884 シェイドレーシング GR86はAドライバーハンディキャップを消化。ふたたび追い上げに入るが、その間にトップを奪うことになったのは予選4番手からスタートした#86 TOM'S SPIRIT GR86。これに#41 エアバスター WINMAX GR86 EXEDY、#18 Weds Sport GR86が続く展開となった。
コンスタントにレースを進めた#86 TOM'S SPIRIT GR86はそのまま逃げ切り、2022年チャンピオンがようやく今季初優勝を飾った。2位となった#41 エアバスター WINMAX GR86 EXEDYが今季のタイトルを獲得し、TRACYSPORTS with DELTAはST-3とともに2クラス制覇を成し遂げている。3位は#18 Weds Sport GR86となった。
ST-4クラスのランキングでは、2位に110.00ポイントを重ねた#60 全薬工業 G/MOTION'GR86が食い込み、今回優勝した#86 TOM'S SPIRIT GR86はランキング3位でシーズンを終えた。
#72 OHLINS Roadster NATSが117.00ポイント、104.50ポイントの#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオが2位という状況で迎えたST-5クラスの第7戦。予選では#72 OHLINS Roadster NATSが幸先良くポールポジションを獲得し、#88 村上モータースMAZDAロードスターが2番手につけた。
迎えた決勝レースでは、序盤から#72 OHLINS Roadster NATSがリードを築くも、富士スピードウェイでのレースらしく、2ワイド、3ワイドが当たり前のような激しい争いが展開されていく。#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオが7周目にリードを奪うも、#72 OHLINS Roadster NATSは冷静にペースを守る展開を進めていった。
10秒のAドライバーハンディキャップもタイヤ交換本数を減らす作戦ではね除けた#72 OHLINS Roadster NATSは、トップに返り咲き優勝。文句なしのST-5クラスチャンピオンを決めた。#17 DIXCELアラゴスタNOPROデミオは追撃及ばず2位でフィニッシュし、ランキングでも2位。3位は#88 村上モータースMAZDAロードスターで、シリーズランキングのトップ3が奇しくも表彰台を占めることになった。